大みそかの夜は、だいたいいつもこうなる。 テーブルの上には空いた缶と、半端に残った酒。 喉の奥が焼けるように気持ち悪く、頭は重い。 深酒だった。 理由ははっきりしている。 一年の終わりに、一人でいるのが耐えられなかった。 テレビはついている。 紅…
深夜二時、俺はスマホの画面を凝視していた。SNSで回ってきた一枚の画像。「これを見たら呪われる」という触れ込みだったが、そんなの信じるわけがない。 画像には、真っ黒な何かが牙を剥いて襲いかかってくる様子が描かれていた。白く濁った目、鋭い牙、そ…
僕が学校に行かなくなって、三ヶ月が経っていた。 親も先生も、もう諦めたように何も言わなくなった。部屋に閉じこもって、ただ時間が過ぎるのを待つ日々。そんな生活に、嫌気がさしていた。 ある日の夕方、ふと思い立って学校に向かった。誰もいない時間を…
深夜、鐘楼の見回りに向かう足が重かった。 見習い僧の俊海は、三日前から続く異変に怯えていた。夜になると、誰も撞いていないはずの梵鐘が鳴るのだ。最初は風か何かだろうと思った。しかし鐘楼に駆けつけても、撞木は元の位置に戻っている。縄も揺れていな…
寝室の窓の向こうには、墓地がある。 賃料の安さに負けてこのアパートを選んだのは失敗だったと、綾乃は毎晩のように思っていた。夫は夜勤続きで、夜にこの部屋にいるのは、ほとんど彼女ひとりだ。 その夜も、食器を洗い終えて、なんとなく寝室の窓を見た。 …
村の外れに、誰も近づかない石塔がある。 俺たち三人が肝試しでそこへ行ったのは、夏休みの終わりだった。懐中電灯の光が揺れる中、ユウキが石塔の表面を照らした。 「うわ、なんか彫ってあるぞ」 無数の名前が刻まれていた。古いものは文字が読めないほど風…
行商人の庄吉は、山と山を縫う古道を急いでいた。 峠を越える前に、雨が落ちてきた。 ぽつ、ぽつ、と肩に冷たいものが刺さる。 すぐに土の匂いが濃くなり、闇の中で雨音だけが膨らんでいく。 「勘弁してくれよ……」 荷車を引きながら見回すが、傘は一本も残っ…