幽霊博士の実験記録──一話完結の現代怪談・短編ホラー集

「ホラー小説×AI創作」──AIが綴る怪談短編と、恐怖を解剖する作品紹介。

妖異抄シリーズ(妖怪系)

妖異抄#10「海坊主の波紋」

夜明け前の海は、いつもより静かだった。 沖へ出るために小舟の綱を解きながら、漁師の真一は眉をひそめた。風はない。潮も荒れていない。なのに、海面だけが落ち着きなく細かく揺れている。まるで、見えない何かが水の下で寝返りを打っているようだった。 …

妖異抄#09「旅館の女郎蜘蛛」

佐藤は「奥湯の宿 糸屋」に着いたとき、すでに夜の十時を過ぎていた。 予約サイトには「山奥の秘湯 創業不明 口コミ数件」とだけあった。安かったから選んだ。それだけだった。 引き戸を開けると、女将が待っていた。 年齢がわからなかった。若くも老いても…

妖異抄#09「雨夜の化け傘」

行商人の庄吉は、山と山を縫う古道を急いでいた。 峠を越える前に、雨が落ちてきた。 ぽつ、ぽつ、と肩に冷たいものが刺さる。 すぐに土の匂いが濃くなり、闇の中で雨音だけが膨らんでいく。 「勘弁してくれよ……」 荷車を引きながら見回すが、傘は一本も残っ…

妖異抄#08「踏切の鉄鼠」

終電を逃した夜、携帯の電池も切れていた。 慎也は遠回りになる踏切を渡るしかなかった。夜の十一時を過ぎ、街灯もまばらな道に人影はない。 カンカンカン、と警報音が鳴り響く。 遮断機が下りる直前、慎也は駆け込もうとして足を止めた。 線路の向こう側に…

妖異抄#07「橋姫の水鏡」

終電を逃した。 橋本は息を吐いて、川に架かる古い橋を渡り始めた。タクシーを拾うには遠回りだが、この橋を渡れば自宅まで徒歩二十分で着く。 深夜の橋には街灯がまばらで、欄干の影が長く伸びている。川面からは冷たい風が吹き上げてきた。 ふと、欄干に寄…

妖異抄#06「消失点」

「ここ、本当に入っていいのかな」 美咲が不安そうに呟いたとき、すでに俺たち探検部の三人は廃屋の玄関を開けていた。蝶番が錆びついた音を立て、黴臭い空気が一気に流れ込んでくる。 「大丈夫だって。村の人も誰も来ないって言ってたし」 部長の健太が懐中…

妖異抄#05「狐鈴」

鈴の音が止まない。 社殿裏の薄暗がりで、美咲は膝を抱えて震えていた。なぜこんなことになったのか。 美咲は二十二歳。三年前に亡くなった祖父の後を継いで、この稲荷神社の宮司になった。本来なら男性が継ぐべき立場だが、跡継ぎがいない。両親は都市部で…

妖異抄#04「灯りの誘い」

老人は杖を突きながら、墓地の石段を一歩ずつ登った。膝の痛みが夜更けの冷気に響く。 月のない夜だった。懐中電灯の薄い光だけが、苔むした墓石の影を浮かび上がらせる。妻の墓参りを欠かしたことは一度もない。五十年間、毎月十五日の夜に。 「また来たよ…

妖異抄#03「声だけの女」

雄介は息を切らしながら、懐中電灯の光を足元に向けた。山道は予想以上に険しく、目的のトンネルまでまだ距離がある。 友人たちとの肝試しの約束だった。廃トンネルで一人きりで一時間過ごし、証拠の動画を撮って帰る。簡単な挑戦のはずだった。 ようやく見…

妖異抄#02「白毛の報い」

吹雪が山小屋を包んでいた。薪をくべても火は湿り気を帯び、赤い芯が揺れるだけだ。 狩人の俺は壁に吊るした獲物を見やった。今朝仕留めた大鹿。 雪の中でよくぞここまで暴れたものだと、己の腕を誇りたい気持ちが半分。だが――胸の奥で、妙なざわめきがあっ…

妖異抄#01「井戸の座敷童」

ばあちゃんの家の裏に、苔むした古井戸がある。 小さい頃から「絶対近寄るな」って言われてた。 理由を聞いても「口を出すな」で終わる。 その井戸、不思議なことにいつ覗いても水がいっぱいに溜まってるんだ。 夏でも干上がらず、雨のあとでも濁らない。 ま…