幽霊博士の実験記録──AIが綴るショートホラーと恐怖作品紹介

「ホラー小説×AI創作」──AIが綴る怪談短編と、恐怖を解剖する作品紹介。

異形譚#05「投函者不明」

私のアパートの郵便受けは、薄い金属板の蓋を押し上げると、手を入れられる程度の隙間があるだけの簡素なものだ。

築三十年近い古い建物で、入居者は全八世帯。その中で若い女性は私だけだ。

夜遅くに帰ってくると、郵便受けの中に小さな茶封筒が入っていた。

宛名は私の名前と部屋番号。差出人欄は空白で、切手も貼られていない。

中には、日記らしきノートが一枚ずつ切り取られた紙が数枚入っていた。びっしりと黒いボールペンで書かれており、やや丸い癖のある字だ。

一枚目には、こう書かれていた。

「八月二日 夜、となりの部屋から壁を叩く音。あれは合図。昨日もあった」

隣の部屋は年配の男性が住んでいるはずだ。

私とは挨拶程度しか話したことがない。妙に生々しい記述に、最初は悪戯かと思った。

数日後、また封筒が入っていた。今度は日付が八月六日になっている。

「また合図。返事をした。壁の中から小さい声。名前を呼ばれた」

私は鳥肌が立った。

封筒は誰が、いつ入れたのだろう。郵便受けには鍵がついていないから、住人なら容易に入れられる。

だが私の名前を知っている人は限られる。

十日後、三通目が届いた。封筒の中の紙は湿っていて、文字が少し滲んでいた。

「声が近くなった。もう、壁の向こうじゃない。足音が、廊下に」

この頃から、夜中に廊下を歩く足音をよく聞くようになった。

アパートは古く、誰かが歩くと床板が軋む音がする。私はなるべく聞かないふりをした。

ある夜、帰宅すると四通目が届いていた。八月二十日。

「合図があった。私も返事をした。すぐそこに立っている。名前を呼ばれた。返事をしてしまった」

日記の筆跡は、今までよりも震えているようだった。紙には爪痕のような跡が残っていた。

それを読んだ夜、寝入りばなに壁を叩く音がした。私は息を殺して耳を澄ませた。 

「……〇〇さん」

自分の名前が、壁の向こうから囁かれた。

翌朝、私は管理人に相談しようと決めた。しかしその前に、最後の封筒が届いた。

封筒の中には、こう書かれていた。

「八月二十四日 部屋に入ってきた。郵便受けの蓋を押し上げて、中を覗いている。……あなたの部屋番号も、名前も知っている」

私は読み終え、無意識に郵便受けを見た。

蓋の隙間の奥で、何かがわずかに動いた気がした。

 

 


読んでくださりありがとうございます。
よければ応援クリックお願いします。