幽霊博士の実験記録──AIが綴るショートホラーと恐怖作品紹介

「ホラー小説×AI創作」──AIが綴る怪談短編と、恐怖を解剖する作品紹介。

呪具記#02「鏡の裏の札」

骨董収集家の間で、◯◯古道具店の奥を知る者は少ない。

表に並ぶのは皿や壺、柱時計。どれも値札がついていて、誰でも手に取れる。

だが奥には腰の高さほどの木戸があり、その向こうは常連でも滅多に入れない。

出入り口には、金属の南京錠が掛けられていた。

ある晩、閉店間際に立ち寄った私は、店主に声をかけられた。

「珍しいのが、入ったんだ」

老いた店主は痩せこけた頬を引きつらせ、木戸の鍵を外した。

奥は薄暗く、古い家具や箱が天井近くまで積み重なっていた。

湿った木の匂いの中に、漆の甘い香りが混じる。

その中央に、背丈ほどの姿見が立て掛けられていた。

木枠は黒く煤け、所々虫食いがあり、艶を失っている。

ガラス面は煤膜のようにくすみ、ぼんやりとしか像を映さない。

「裏を見てごらん」

店主はそう言って鏡をゆっくり傾けた。

枠の裏板に、黄ばんだ和紙が貼られていた。

墨でびっしりと細かな文字が書かれている。筆の運びは均一で、読む者を拒むかのように詰められていた。

それが祝詞のようなものであると直感したが、神社の札とは違い、妙に歪んだ筆致だった。

「外したらいけない。そう言われて手に入れたんだ」

店主の声はかすれていて、冗談の響きがなかった。

「誰に?」と聞くと、

「寺の坊主だよ。村を出て行く時、持って行けと言われた」

それだけを告げると、彼は鏡を元の位置に戻した。

——二週間後。

新聞の片隅で、店主が自宅で急死したと知った。心臓発作だったという。

葬儀の後、遺品整理の手伝いを申し出た私は、例の鏡を見つけた。

遺族は興味もなく、「持って行っていい」と言った。

部屋に置くと、不思議なことに気付いた。

夜、部屋の明かりを消しても、鏡の中だけがうっすらと白んで見える。

輪郭の曖昧な人影のようなものが、そこに立っている時がある。

目を凝らすと消え、視線を逸らすとまた現れる。

骨董品の癖だと軽く考えていた。

しかし数日後、帰宅した時、鏡がわずかに温かくなっているのに気付いた。

手を当てると、裏側からじんわりと熱が伝わってくる。

そして夜ごと、鏡の中の人影は少しずつ形を持ちはじめた。肩の線、髪の揺れ、口元の笑み。

ある晩、我慢できずに裏の札を確かめた。

黄ばんだ紙は枠の隙間にしっかり押し込まれ、墨はすっかり薄れていた。

端をめくった瞬間、冷気とも熱気ともつかない空気が指先を包んだ。

ふと耳の奥で、低い声が囁いた。

——戻せ。

振り向くと、鏡が部屋の明かりを反射していない。

代わりに、くっきりと昼間のような光景が映っていた。

そこに立っていたのは、私と同じ顔をした何者かだった。

だがその口は裂け、歯がむき出しになって笑っている。

 

 

視界が揺れた。気付けば私は鏡の中に立っていた。

外の部屋には「私」がいる。

そいつは札を丁寧に元の位置に押し込み、裏板を叩いて固定した。

そしてこちらを見やり、裂けた口をさらに開いた。

音がない。

窓の外は真っ白な靄に覆われ、風もない。

家具は同じなのに、空気は水の中のように重い。

私は鏡の向こうへ手を伸ばすが、表面は固く、指先が跳ね返される。

外の「私」は、部屋の灯りを落とし、静かに座った。
その動きに合わせ、私の呼吸も苦しくなっていく。

やがて視界の端に、もう一つの人影が現れた。

それは私の肩越しに覗き込み、耳元で吐息をかけた。

——戻ったんだね。

その声を最後に、私は自分の名を思い出せなくなった。

今も鏡の裏には、黄ばんだ札がきっちりと貼られている。

外の「私」が、それを剥がす日は来ないだろう。


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