幽霊博士の実験記録──AIが綴るショートホラーと恐怖作品紹介

「ホラー小説×AI創作」──AIが綴る怪談短編と、恐怖を解剖する作品紹介。

学苑怪談#03「濡れた足跡」

掃除当番の終わり際、私は最後に女子トイレの床を拭いていた。

水気を含んだ雑巾をしっかりと絞り、隅から隅まで滑らせる。

ワックスの匂いと、古い排水口の生臭さが混ざった空気が、狭い空間に滞っている。

廊下の向こうでは、ほかの当番がバケツを片づけている音が聞こえる。

ここを終わらせれば、今日の当番は解放だ。

床は水気を帯び、照明を映して白く光っている。

最後の一拭きをして、雑巾を持ち上げたとき――。

……足跡があった。

床の光沢に濡れた輪郭が浮かんでいる。

裸足の形。小さくもなく、大きくもない。

女子のそれにしては妙に形が整っていた。

「……え?」

反射的に振り返る。

個室はすべて開いていて、人影はない。

足跡は、入り口から一歩だけ内側に踏み込んだところで止まっていた。

私はそこをもう一度拭いた。

水気を雑巾が吸い取って、輪郭は消えた。

終わり。

そう思って雑巾を洗おうと背を向けた瞬間、またそこに、同じ形の足跡があった。

さっきより半歩分だけ前に進んでいる。

心臓がざわつくのを感じながら、私はそれを再び拭き取った。

何度拭いても乾かぬかのように、すぐ足跡がにじむ。

「……誰か、いるの?」

声に応える気配はなかった。

ただ、換気扇の低い唸りだけが続いている。

三度目に拭き取ったとき、足跡はもう二歩分、奥へ進んでいた。

その向きは、まっすぐ私の立つ位置へ。

私は後ずさりし、廊下へ逃げ出すことを考えた。

でも、出口は足跡の延長線上。

通り抜けなければ帰れない。

足跡は、拭けば拭くほど近づいてくる。

四歩目、五歩目……

湿った輪郭が床にくっきりと浮かび、私の影の端を踏みそうになる。

膝が震えて、雑巾を持つ手から力が抜けそうだ。

私は奥の個室へ逃げ込むように下がった。

そこで膝を抱え、扉の隙間から床を見た。

蛍光灯の光に濡れたタイルが鈍く反射し、そこに足跡が増えていく。

足跡は七歩目まで、はっきりと続いていた。

その先に――足があった。

濡れた素足が二本、きちんと床に立っている。

だが、その上には何もなかった。

足首から先は空白で、脚も胴も頭も存在しない。

あるのは、濡れた素足だけ。

 

 

私は呼吸を止めて見つめた。

素足は動かず、ただそこに在り続ける。

けれども床にはさらに足跡が増え、私の方へ迫ってきた。

やがて足跡は、目の前で止まった。

素足も、影も、音もなく。

私は雑巾を放り出し、廊下へ逃げた。

だが走り出した瞬間、靴の中が妙に冷たいことに気づいた。

視線を落とす。

自分のスニーカーの足元から――濡れた足跡が続いている。

それは、拭いても消えない。


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