幽霊博士の実験記録──AIが綴るショートホラーと恐怖作品紹介

「ホラー小説×AI創作」──AIが綴る怪談短編と、恐怖を解剖する作品紹介。

幽譚録#03「もう一人」

山奥の夜道を、彼の車が走っていた。

窓の外は真っ暗で、ライトに照らされた細いアスファルトが、かろうじて道の形を見せているだけだった。

「この道で合ってるんだよね?」

私はスマホを握りしめながら言った。

「地図だと、この先のトンネルを抜ければ街に出るはず」

彼はそう言って笑った。

前方に、ぽっかりと口を開けた黒い影が見えた。苔に覆われ、照明ひとつない古びたトンネル。

胸の奥がきゅっと縮む。

「……嫌な感じ」

「ただのトンネルだろ。怖がりすぎ」

彼は軽く言って、アクセルを踏み込んだ。

車が闇に呑み込まれた瞬間、耳が詰まるような圧迫感が走った。

世界がしんと沈黙する。

――そのとき。

「ねえ……今、後ろで音しなかった?」

私は声を潜めた。

「気のせいだよ」

そう言いながら、彼はルームミラー代わりのモニターをちらりと見た。

「……え?」

彼の表情が凍りついた。

促されて私も見た。

そこには、後部座席に座る濡れた髪の女が映っていた。顔をうなだれ、動かない。でも振り返ると――そこには誰もいなかった。

 

 

「ほら、いないじゃん……!」

必死に叫んだ。けれどモニターの女は、ゆっくりと顔を上げた。

白く濁った目が、まっすぐ私を見ていた。

「抜ければ大丈夫だ!」

彼が叫び、車は出口に向かって加速する。

やがて、光。

トンネルを抜け、夜空が広がった。冷たい風が一気に流れ込む。

「……消えた。ほら、大丈夫だ」

彼は額の汗を拭い、笑った。モニターには、もう女の姿は映っていなかった。

私も安堵の息を漏らした。

――だが、その瞬間、ぞっとした。

モニターに映っている助手席の女は、安堵の笑みを浮かべていた。けれど、その顔は私ではなかった。

私の輪郭をしているのに、どこか別人。瞳が濁り、笑みが引きつっている。

「え……」

動揺して視線を落とすと、自分の手が、知らないうちに後部座席のシートを掴んでいた。

身体が思うように動かない。声も出ない。

モニターの中、助手席の“私”が彼と談笑している。二人の笑い声が車内に響く。

私は――ここじゃない。私は、後ろに閉じ込められている。

必死に窓を叩こうとした。けれど腕は動かない。喉も硬直して、声も出せない。ただ、息だけが苦しく荒れていく。

助手席の“私”が、彼に向かって微笑んだ。

その笑みは私の笑みではない。

中身のない、形だけの皮。

彼は気づいていない。隣に座っているのが、もう私ではないことに。

車は山道を滑るように進んでいく。

笑い声が響く中で、私は後部座席の奥に沈んでいった。

暗闇に押し込められたまま、二度と戻れないと悟りながら。


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