幽霊博士の実験記録──AIが綴るショートホラーと恐怖作品紹介

「ホラー小説×AI創作」──AIが綴る怪談短編と、恐怖を解剖する作品紹介。

狂気譜#06「同じゴミ」

最初に気づいたのは、三週間ほど前のことだった。

いつものように朝のゴミ出しをして、透明な袋を集積所に置いたとき、隣に置かれた袋が目に入った。中身が透けて見える。

白菜の切れ端、豚肉のトレー、豆腐のパック。

昨夜、私が捨てたものと同じだった。

偶然だと思った。鍋の季節だし、同じような献立になることはある。この団地には三十世帯が住んでいる。誰かと被ることくらい、珍しくない。

でも翌週、また同じことが起きた。

今度は鮭の切り身が入っていたパック、キャベツの芯、納豆の容器。全部、私が前日に捨てたものだ。銘柄まで同じ。スーパーのシールも同じ店のものだった。

心臓が嫌な音を立てた。

誰かが私の真似をしている。

そう思った瞬間、背筋が凍った。でも、よく考えれば不自然だ。誰が、なぜ、私の買い物を真似る必要がある? 近所に住む主婦が、たまたま同じ店で同じものを買っただけかもしれない。

私は自分に言い聞かせた。

それからは、ゴミを出すたびに周りの袋を確認するようになった。誰のゴミかわからないように、わざと時間をずらして出すようにもした。

けれど、必ず、私と同じゴミが置かれていた。

卵のパック、牛乳の紙パック、バナナの皮。何もかもが一致していた。

私が火曜日にゴミを出せば、同じものが隣にある。木曜日に出せば、またそこにある。

ある日、試してみることにした。

普段は買わないものを買った。輸入食材店でフランス産のチーズ、オーガニックのトマト缶、見たこともない銘柄のパスタ。レシートをポケットに入れて、その日の夜、パッケージを全部捨てた。

翌朝、ゴミ捨て場に行った。

手が震えた。

そこに、同じチーズの箱があった。同じトマト缶、同じパスタの袋。

誰かが私を監視している。

買い物の中身を、どこかで見られている。

恐怖が全身を駆け抜けた。警察に行くべきだと思った。でも何を言えばいい? 「誰かが私と同じゴミを捨てるんです」なんて、笑われるだけだ。

それに、もしかしたら——。

もしかしたら、私の思い違いかもしれない。記憶が混乱しているだけかもしれない。

そう思いたかった。

でも翌週、決定的な何かが起きた。

私は夫の誕生日に、特別なワインを買った。小さな酒屋で取り寄せてもらった、ラベルに手書きの文字が入った一本だけのボトル。その晩、二人で飲み干して、空き瓶を捨てた。

翌朝、集積所にそのワインの瓶があった。

同じラベル。同じ手書きの文字。

世界に一本しかないはずの、あの瓶が。

叫びそうになった。

誰かが、私の家の中まで監視している。

いや、違う。もっと恐ろしい可能性が頭をよぎった。

誰かが私の家に入っている。私が寝ている間に。

鍵を全部取り替えた。防犯カメラをつけようと夫に相談した。

「ゴミが同じだから?」

夫は笑った。

「気にしすぎだよ。誰も君のゴミなんか見てない」

でも夫にはわからない。あの瓶のことは言えなかった。言ったら、私が本当におかしくなったと思われる。

それから数日、私は一切ゴミを出さなかった。家の中にゴミ袋を溜め込んで、誰にも見られないように隠した。

でも限界が来た。

昨夜、どうしても捨てなければならなくなった。真夜中の二時、誰もいない時間を狙って、こっそり集積所に行った。

袋を置いて、すぐに立ち去ろうとした。

その時、街灯の光で、もう一つの袋が見えた。

私のすぐ隣に置かれた、透明な袋。

中身を見た瞬間、息が止まった。

それは、今まさに私が捨てたばかりのものと、完全に同じだった。

同じ魚の骨、同じ野菜の切れ端、同じ——。

違う。

これは、私が今日捨てたものじゃない。

私がこれから捨てる予定だったものだ。

冷蔵庫にまだ残っている、明日使う予定の食材の、パッケージだった。

頭の中が真っ白になった。

誰かが、私の未来を知っている。

私がこれから買うものを、先に捨てている。

足が動かなくなった。

――その時、背後で何かが動く音がした。

振り返ることができなかった。

でも、わかった。

そこに立っているのは誰かじゃない。

それは——私だった。

同じ服を着て、同じ袋を持った、もう一人の私。
私の手に握られたゴミ袋の“赤い紐”が、夜の闇の中でかすかに光っていた。
その赤が、現実と幻の境界を裂くように見えた。

 

 

街灯の光の外、もう一人の私は顔を影に沈め、微動だにせずこちらを見つめていた。
空気が歪んで、音が消えた。

私は叫びながら走って逃げた。家に駆け込んで、鍵を全部かけた。

夫が起きてきた。

「どうしたの?」

説明できなかった。

ただ震えながら、窓の外を見ていた。

暗闇の中に、誰かが立っている気がした。

今朝、ゴミ捨て場に行った。昨夜の袋はもう回収されていた。

でも、新しい袋が置かれていた。

中を見て、膝から力が抜けた。

そこには、今日の朝食で食べたものの残骸が入っていた。

まだ家の中のゴミ箱に入っているはずの、食べ終わったばかりのトーストの耳、ヨーグルトの容器。

私はまだ、それを捨てていない。

家に戻って、ゴミ箱を確認した。

空だった。

いつの間にか、誰かが持ち出していた。

いや、違う。

誰かじゃない。

私が、持ち出したんだ。

もう一人の私が。

鏡を見た。

そこに映っているのは、本当に私なのだろうか。

それとも、私が、誰かの真似をしているだけなのだろうか。

わからない。

わからなくなってしまった。

ゴミ捨て場に、また新しい袋が増えている。

今日、まだ買い物にも行っていないのに。


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