幽霊博士の実験記録──AIが綴るショートホラーと恐怖作品紹介

「ホラー小説×AI創作」──AIが綴る怪談短編と、恐怖を解剖する作品紹介。

学苑怪談#06「鏡の中の十人目」

練習が終わり、バレー部の九人が更衣室に流れ込んできた。

いつものように笑い声が響く。汗の匂いと制汗スプレーの甘い香りが混じり合う、この時間が私は好きだった。

壁一面の鏡の前で、みんなが思い思いに着替えを始める。

「今日のスパイク、最高だったよ」

「ありがとう。でも最後ミスったけどね」

何気なく鏡を見た瞬間、私は数を数えていた。

一、二、三、四、五、六、七、八、九……十。

心臓が一度、大きく跳ねた。

もう一度数える。確実に、十人いる。でも私たちは九人のはずだ。

「ねえ」

私の声は震えていた。

「鏡、見て」

「何?」

先輩が振り返る。他のメンバーも次々と鏡を見た。

「十人いる」

誰かが呟いた。

更衣室が静まり返る。私たちは横一列に並び、鏡の中の自分たちを凝視した。

全員が映っている。でも確かに一人多い。

「誰?」

「誰が余計なの?」

パニックになりかけた時、私は気づいた。

左端にいる"私"が、笑っていない。

いや、正確には表情がない。他の全員が恐怖で顔を歪めているのに、その"私"だけが無表情で、まっすぐこちらを見ている。

「あれ、私じゃない」

私は声を絞り出した。

その瞬間、鏡の中の"それ"と目が合った。

体が動かない。

金縛りのように、筋肉が硬直する。周りの声が遠くなる。

「大丈夫? どうしたの?」

誰かが私の肩を揺する。でも私は"それ"から目を離せない。

"それ"がゆっくりと口を開いた。

鏡の中だけで。

音は聞こえない。でも唇の動きではっきりと分かった。

『見つけた』

悲鳴が上がった。

誰かが電気のスイッチを消した。真っ暗になった更衣室で、私たちは叫び、もつれ合いながらドアへ殺到した。

ようやく外に出て、廊下の明かりの下で私たちは荒い息をついた。

「もう大丈夫だよ」

先輩が震える声でそう言った。

「ただの見間違いだったんだよ、きっと」

私たちは頷き合った。そうだ、見間違いだ。疲れていたんだ。

でも教室に戻る途中、トイレの鏡の前を通りかかった時。

私は見てしまった。

鏡に映る自分の隣に、もう一人の"私"が立っている。

無表情で。

じっと、こちらを見ている。

振り返っても、そこには誰もいない。

鏡の中だけに、"それ"はいた。

「ねえ、大丈夫?」

後ろから声をかけられて振り向くと、先輩が心配そうに覗き込んでいる。

でも鏡を見ると、先輩の隣にも"もう一人"が立っていた。

無表情で、私たちを見ている。

「先輩、鏡……」

私が指差そうとした瞬間、先輩の顔から血の気が引いた。

先輩も気づいたのだ。

私たちは走った。階段を駆け下り、玄関を飛び出した。

外は夕暮れで、オレンジ色の光が校舎を照らしている。

「もう平気だよ」

先輩が言った。

「外に出たから。もう大丈夫」

でも校舎のガラス窓に、私たちの姿が映り込んでいた。

二人の隣に、"二つ"の影が寄り添っている。

無表情で、じっと私たちを見つめている。

そして今、私は自分の部屋にいる。

あれから一週間が経った。

もう大丈夫だと、自分に言い聞かせている。

でも部屋の鏡を見るたびに、"それ"がそこにいる。

 


黒目だけの虚ろな目で、私を見ている。

振り返っても、誰もいない。

鏡の中だけに、"それ"は存在する。

そして今日、気づいてしまった。

"それ"は、少しずつ私に近づいている。

毎日、ほんの少しずつ。

鏡の中で。

もうすぐ、"それ"は私と重なる。

その時、何が起こるのだろう。

私はもう、鏡を見ることができない。

でも見なくても、感じる。

背後に、"それ"がいる気配を。

今も。


読んでくださりありがとうございます。
よければ応援クリックお願いします。