幽霊博士の実験記録──AIが綴るショートホラーと恐怖作品紹介

「ホラー小説×AI創作」──AIが綴る怪談短編と、恐怖を解剖する作品紹介。

狂気譜#08「帰路の家族」

夕暮れの住宅街で、足が止まった。

道の向こうから、四人家族がこちらへ歩いてくる。

父と母、子どもが二人。

全員が手をつなぎ、同じ歩幅、同じ速さで進んでいた。

不気味だったのは、笑顔だ。

口角の上がり方が、まるで一枚の写真を切り貼りしたように一致している。

 

 

瞬きをするたび、表情が微妙に遅れてついてくる気がした。

目が合った瞬間、胸の奥が冷えた。

視線はこちらを向いているのに、誰も見ていない。

硝子玉を並べたような目だった。

「こんばんは」

反射的に声をかけてしまう。

「こんばんは」

返事は即座だった。

四人の声が、重なっていた。

完全な同時ではない。

ほんの一拍ずれ、なのに一つの音に聞こえる。

耳の奥が、じんと痺れた。

父親が首を傾ける。

それに合わせ、母も、子どもたちも、同じ角度で首を傾けた。

骨が擦れる音が、どこかで鳴った気がした。

近づくにつれ、違和感が増す。

砂利道を歩いているのに、足音がない。

いや、正確には、音が地面に届いていない。

鼻を突く匂いに気づいた。

湿った土ではない。

鉄と、長く放置された肉のような匂い。

「どこへ行くんですか」

喉が張りついたまま、そう聞いた。

母親が答えた。

「帰るんです」

父親も、子どもたちも、同時にうなずく。

指さした先は、行き止まりの空き地だった。

取り壊された家の基礎だけが残る場所。

夜になると、誰も近づかないはずの場所。

「こちらです」

四人が、一歩前に出た。

その瞬間、父親の袖口から黒い染みが、内側から滲むように広がった。

母親の靴先は、赤黒く濡れている。

踏みしめるたび、濡れた布を潰す音がした。

子どもたちの指は、異様に白く、血が通っていない。

つながれた手の隙間から、細い糸のようなものが垂れ、地面に触れた途端、ふっと消えた。

逃げようとした。

足が、動かない。

視線を落とすと、自分の靴底にも、同じ糸が絡みついていた。

気づいたときには、両手をつかまれていた。

人の手ではなかった。

骨の感触がなく、冷たく、ぬるりとしている。

握られているのに、形が定まらない。

「一緒に帰りましょう」

父親の声が、腹の奥から響いた。

抵抗する暇もなく、視界が暗転する。

次に見えたのは、一軒の家だった。

空き地の奥に、存在するはずのない家が建っている。

見覚えがあった。

壁の染み、歪んだ郵便受け、欠けた表札。

自分の家だった。

玄関の前で、四人が立ち止まる。

父親が振り返り、あの笑顔のまま言った。

「ただいま」

胸の奥が、ぐしゃりと潰れる。

その瞬間、視界が裏返った。

道の向こうに、ひとりの人間が立っている。

怯えた顔で、こちらを見ている。

夕暮れの住宅街。

立ち尽くす、その姿。

さっきまでの、自分だった。

口が、勝手に動く。

頬が引きつり、同じ角度で笑っているのがわかる。

声が、自然にこぼれ落ちた。

「こんばんは」

四人分だったはずの声が、いつの間にか、五つに揃っていた。

その数が、まだ増える余地を残していることに、向こうの人間は、まだ、気づいていなかった。


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