幽霊博士の実験記録──AIが綴るショートホラーと恐怖作品紹介

「ホラー小説×AI創作」──AIが綴る怪談短編と、恐怖を解剖する作品紹介。

異形譚#13「ホーム下の応答」

深夜二時の地下鉄ホーム。最終列車が去った後の静寂は、作業員の田村にとって日常だった。

「よし、今日も点検するか」

工具箱を手に、田村はホームの端へ向かう。線路とホームの隙間——そこに落ちた私物を回収するのも、彼の仕事の一つだった。

懐中電灯で照らすと、財布が一つ、傘が二本。それから、奥の方に光る何か。

田村は隙間に身を滑り込ませた。狭い。ホームの下は想像以上に暗く、湿っていた。膝をつき、這うように進む。

カツン、と工具が線路に当たる音がした。

その瞬間、奥から何かが動く気配がした。

田村は手を止めた。耳を澄ます。聞こえるのは自分の呼吸だけ。気のせいだろうか。再び這い始めると、また——カツン。

今度ははっきりと分かった。奥の暗闇から、何かがこちらへ近づいてくる音。ガサガサという擦れる音。いや、違う。それは這いずる音だった。

「誰か、いるのか?」

返事はない。ただ、その音は確実に近づいていた。

田村は急いで後退しようとしたが、狭い隙間で体が引っかかる。焦りが胸を締め付ける。懐中電灯を奥へ向けた。

そこに——いた。

人の形をした何か。だが、関節が逆に曲がり、首が不自然に傾いている。顔は見えない。見えないのに、こちらを見ているのが分かった。

 

 

田村は悲鳴を上げながら必死で後退した。工具箱が線路に落ち、ガシャンと大きな音を立てる。

その音に反応して、それは一気に距離を詰めた。

「うわああああっ!」

田村はホームの上へ転がり出た。心臓が破裂しそうだった。震える手で携帯電話を取り出し、同僚の番号を押す。

「もしもし、田村か?どうした、こんな時間に」

「た、助けてくれ!ホームの下に、何かいる!人じゃない、何かが——」

「落ち着け。今から行く。十五分待ってろ」

電話が切れた。田村は隙間から目を離せなかった。暗闇の中で、何かがじっと待っている気がした。

恐怖で体が固まる。呼吸を止め、身じろぎ一つしなかった。動けば——音を立てれば——また来る。

心臓の鼓動だけが、やけに大きく聞こえた。その音すら、あれに聞こえてしまうのではないか。田村は必死で息を殺した。

一分が、永遠のように長い。

暗闇の向こうで、何かが這う音が微かに聞こえる。近づいているのか、遠ざかっているのか。判別できない。ただ、そこに——いる。

やがて同僚の佐藤が到着した。

「大丈夫か?顔色悪いぞ」

「佐藤さん、本当にいたんです。ホームの下に——」

佐藤は苦笑いを浮かべた。「疲れてるんだろ。俺が確認してくる」

「やめてください!危険です!」

だが佐藤は聞かず、懐中電灯を持って隙間へ潜り込んでいった。田村は震えながら見守る。

三十秒。一分。二分。

「佐藤さん!」

返事がない。

田村は意を決して、再び隙間を覗き込んだ。懐中電灯の光が奥で揺れている。だが、持ち主の姿は見えない。

「佐藤さん!」

光が、ゆっくりとこちらへ向いた。

照らされたのは——佐藤の顔だった。だが、その表情は凍りついたように硬直し、口だけが不自然に開いている。

そして、彼の体が引きずられるように奥へ消えていった。懐中電灯だけが、線路の上に転がっている。

田村は叫び声を上げた。走ってホームの階段を駆け上がる。地上へ。人のいる場所へ。

改札を抜け、外の空気を吸い込んだ時、ようやく恐怖が薄れていくのを感じた。もう二度と、あの仕事には戻らない。そう心に決めた。

翌日、田村は辞表を提出した。上司は引き留めたが、理由は言えなかった。

それから三週間。新しい仕事を探していた田村の元に、古い同僚から連絡が入った。

「田村、佐藤さん、見つかったよ」

「え?本当ですか?」

「ああ。でも、おかしなことにな——彼、あの日からずっと地下鉄で作業してたって主張してるんだ。俺たちが心配して探してたのに、毎日普通に出勤してたって。記憶が混乱してるみたいで、病院に運ばれた」

田村の背筋に冷たいものが走った。

「あと、変なこと言ってたんだ。『線路の音がうるさくて仕方ない』って。静かな病室でも、ずっと線路の下にいるみたいに、何かの音に怯えてるんだ」

電話を切った後、田村は窓の外を見た。

遠くに見える地下鉄の入口。人々が吸い込まれていく。

そして、田村の耳に——聞こえた気がした。

地面の下から、微かに響く、何かが這いずる音を。


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