幽霊博士の実験記録──AIが綴るショートホラーと恐怖作品紹介

「ホラー小説×AI創作」──AIが綴る怪談短編と、恐怖を解剖する作品紹介。

呪具記#10「祠の五寸釘」

「今年も来たか」

老人は山道を登りながら、懐から五寸釘の入った布袋を取り出した。村に伝わる風習だ。山の神を鎮めるため、祠の人形に毎年新しい釘を打つ。古い釘は山の怒りを吸い取っているから、抜いて土に還さねばならない。

苔むした石段を上がると、小さな祠が現れた。老人は扉を開け、中を覗き込む。木造の祭壇に、古びた人形が安置されている。全身に無数の五寸釘が刺さった人形だ。

「さて、と」

老人は新しい釘を一本取り出し、人形の胸に打ち込んだ。鈍い音が森に響く。二本目、三本目と釘を打つうちに、ふと違和感を覚えた。

人形の目が、こちらを見ている。

いや、気のせいだ。老人は首を振り、作業を続けた。十本の釘を打ち終え、古い釘を抜き取る。錆びた釘は簡単に抜けた。布袋に入れ、老人は祠を後にした。

山を下る途中、背後から足音が聞こえた。振り返っても誰もいない。また歩き出すと、また足音がする。

老人は早足になった。足音も速くなる。

村に戻ると、隣家の主婦が洗濯物を干していた。

「お疲れさまです」

「ああ、終わったよ」

老人はほっとして自宅に入った。古い釘を裏山に埋め、居間で茶を飲む。窓の外では日常が流れていた。

その夜、老人は目を覚ました。誰かが家の中を歩いている。足音は廊下を進み、寝室の前で止まった。

ゆっくりと襖が開く。

月明かりの中に、あの人形が立っていた。全身の釘穴から血のようなものが滲んでいる。人形は老人に向かって歩き出した。

 

 

老人は叫ぼうとしたが、声が出ない。人形の手が伸びてくる。冷たい指が首に触れた瞬間——。

朝、隣家の主婦が訪ねてきた。いつまでも起きてこない老人を心配したのだ。寝室の襖を開けると、老人は布団の中で安らかに眠っていた。

「よかった、ただの寝坊か」

主婦はそっと襖を閉めた。

老人は確かに眠っていた。だが、その胸には十本の新しい五寸釘が、深々と打ち込まれていた。

翌日、村長が老人の訃報を告げた。老人は昨夜、心臓発作で亡くなったという。

「安らかな最期だったそうだ」

村長はそう言った。誰も胸の釘には気づかなかった。見えなかったのだ。医師も、家族も、誰一人として。

葬儀が終わり、村長は溜息をついた。

「これで三人目か」

若い衆が首を傾げる。

「三人目って?」

「ここ三年、祠の当番をした者が皆、一ヶ月以内に死んでる。偶然だと思ってたが」

村長の言葉に、場が凍りついた。

「四年前の田中さんも、五年前の鈴木さんも」

「まさか、祟りですか」

「いや、皆高齢だったからな。医師も自然死だと」

村長は首を振ったが、表情は硬い。

「今年の当番は誰です?」

沈黙が流れた。誰も手を挙げない。

「くじで決めるしかないか」

村長がくじを用意した。若い男が震える手で引く。当たりだった。

「佐藤、すまんな」

「い、いえ」

佐藤は青ざめていた。

一ヶ月後、佐藤は祠に向かった。拒否すれば村八分になる。だが行けば死ぬかもしれない。

祠の前で立ち尽くす佐藤に、村長が声をかけた。

「一緒に行こう。二人なら大丈夫だろう」

村長の提案に、佐藤は頷いた。二人で祠の扉を開ける。

人形はそこにあった。いつもと変わらない姿で。

村長が釘を打ち始めた。佐藤は見守る。十本の釘を打ち終え、古い釘を抜き取った。

「よし、終わった。急いで帰ろう」

二人は山を駆け下りた。背後から足音は聞こえなかった。

村に戻り、佐藤は安堵した。

「村長と一緒だったから、大丈夫だったんだ」

その夜、佐藤は安心して眠りについた。

だが翌朝、佐藤の妻の悲鳴が村に響いた。

佐藤の胸には、十本の五寸釘が打ち込まれていた。

そして同じ朝、村長の家からも悲鳴が上がった。

村長もまた、胸に十本の釘を打ち込まれて死んでいた。

人形は、祠で数を数えていた。

一人につき、十本。二人なら、二十本。

祭壇を見れば分かったはずだ。新しく打たれた釘は、二十本あった。

翌年、村人たちは恐怖で震えた。誰も祠に行きたがらない。だが放置すれば山の神が怒る。話し合いの末、三人で行くことに決めた。

三人なら、きっと大丈夫だ。

祠の人形は、今日も微笑んでいる。


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