幽霊博士の実験記録──AIが綴るショートホラーと恐怖作品紹介

「ホラー小説×AI創作」──AIが綴る怪談短編と、恐怖を解剖する作品紹介。

異形譚#07「道、覚えてるでしょ?」

深夜二時を回った頃、タクシーの無線はすっかり沈黙していた。

街の灯りは眠りに落ち、交差点の信号だけが律儀に赤と青を繰り返している。

ハンドルを握りながら、運転手の佐藤は煙草に火をつけた。こういう時間帯は、退屈か、あるいは妙な客に当たるか、どちらかしかない。

前方で手を挙げる影を見つけ、ブレーキを踏んだ。

後部座席に乗り込んできたのは、二十代半ばほどの女だった。髪は肩までで、黒のコートを羽織っている。

「道、覚えてるでしょ?」

そう言って、彼女は窓の外に視線を落とした。

佐藤は眉をひそめた。初めて会う顔だ。

だが、客の言葉を否定しても仕方ない。曖昧に笑って、アクセルを踏んだ。

走り出して間もなく、彼女は再び口を開いた。

「ここ、左。覚えてるでしょ?」

結局、指示されるまま走った末に、郊外の住宅地に着いた。

降りるとき、女は金を置き、「ありがとう」とだけ言って闇に消えた。

――その一時間後。

同じ交差点で、また手が挙がった。今度はスーツ姿の男だ。乗り込むなり、やはり同じ言葉を口にした。

「道、覚えてるでしょ?」

佐藤の背筋がわずかに冷えた。声の調子も抑揚も、先ほどの女とほとんど同じだ。

「……ええ、まあ」

自分でも不自然な返事だと思いながら、車を走らせた。男も途中で窓を指さし、

「ここ、右。覚えてるでしょ?」
と呟く。

着いた先は、先ほどと同じ住宅地だった。

違う家かと思ったが、暗闇に浮かぶ門柱は、たしかに同じだった。

男は金を払い、無言で降りた。

胸の奥に重い不安が沈殿していく。

――三度目は午前四時を少し回った頃だった。

交差点の信号の下、今度は老人が立っていた。

杖を突き、ゆっくりとタクシーに乗り込む。

「道、覚えてるでしょ?」

佐藤の喉がひゅっと鳴った。

同じ言葉。同じ抑揚。三度目ともなると、ただの偶然では片づけられない。

車を発進させながら、彼はバックミラーを盗み見た。老人の顔は、街灯の明かりのたびに影に沈み、細部が見えない。

「ここ、真っ直ぐ。覚えてるでしょ?」

道は一本道だ。やがて住宅地の入口が近づく。

――だが、その先に立っていたのは、最初に乗せた女だった。

彼女は暗がりに立ち、笑っていた。

佐藤は急ブレーキを踏んだ。だが、振り返ると後部座席にはもう誰もいない。

エンジン音だけが虚しく響く。

交差点へ戻ろうとハンドルを切ったとき、ルームミラーに映る後部座席に気づいた。

――女と男と老人が、並んで座っていた。

三人の口が同時に開く。

「道、覚えてるでしょ?」

 

 

声が車内を満たす。逃げ場などない。

佐藤はアクセルを踏み込み、交差点に飛び込んだ。信号は赤だった。

轟音。ガラスの砕ける音。鉄の軋み。

最後に聞いたのは、信号機の点滅ではなく、あの三人の声だった。

「ここで終わり。覚えてるでしょ?」


読んでくださりありがとうございます。
よければ応援クリックお願いします。